大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和57年(う)32号 判決

一 刑法第二三八条にいう暴行は、相手方の逮捕の遂行等を抑圧するに足りる程度のものであることを要し、その存否は犯行時の時間的、場所的関係、被告人と被害者との性別、年齢、体格等の相関関係のもとでの当該暴行の態様等諸般の状況を総合して判断すべきことは、原判示の説示するとおりである。関係証拠によれば、本件においては、被告人が被害者秋本愛子に暴行を加えた現場は原判示マルダイ中和店店舗北側出入口から約二・八メートルほど外に出た地点で、その地点そのものは店内からの灯火で暗いとはいえないが、冬期の閉店間際の昭和五六年一二月一六日午後六時三五分ころという時間帯として、少し離れると暗い状態であつたうえ、助けを求めれば店内の人が駆けつけることができたとはいえ、当時間口約一七メートル、奥行約四〇メートルの同店内には客はなく、従業員は、被害者以外には一見して見えない奥の方に二名がいただけで、店外の道路上には通行人はまばらであつた状況(被告人の当審における供述等によれば、被告人が予め自己の車を停めた駐車場から同店舗が面している中和通りに出るまでの数十メートルの間は全く人に会わず、中和通りでも二、三の人にすれちがつただけであつたことが認められ、また関係証拠によれば、被告人が本件暴行現場から百数十メートル逃走して逮捕されるまでの間、店内から駆けつけ、さらに被告人を追跡したマルダイ中和店の店長米田利治、店員畠山鉄夫とその途中通り合わせて被告人の追跡、逮捕に協力した芳賀正喜ほか二名及びたまたまマルダイ中和店の玄関付近に来合わせた小原京之介のほかには、ほとんど通行人はいなかつたことが認められる。)のもとで、マルダイ中和店店内の前示出入口自動ドア付近で被告人の左脇腹付近に両手でしがみついたもののそのまま店外の前示暴行現場まで被告人に引きずられ、ただ逃走されまいとして必死にしがみついていただけの三〇歳すぎの女性である被害者に対し、短時間であつたにせよ、やや小柄とはいいながら、大工として力仕事に従事する壮年男性である被告人が、手拳で、ところかまわず被害者の顔面、左肩、右肘等を力まかせに数回にわたり殴打したものであることが、それぞれ認められるのであつて、これらの状況を総合すれば、被告人の被害者への暴行は逮捕(私人による場合を含む。)に伴い通常予想される抵抗をはるかに超え、被害者の逮捕の遂行を抑圧するに足りるものと認めるのが相当である。

二 刑法第二四〇条(同法第二三八条の準強盗の結果である場合を含む。)にいう傷害が単純傷害罪における傷害と意義を異にしないと解する点は、当裁判所も原審と同様であり(最高裁昭和四一・九・一四決定、裁判集一六〇号七三三頁参照)、また本件被害者の傷害は、右の見解に立てばもとより、仮に強盗致傷罪の傷害は単純傷害罪の傷害よりも一段と程度の重いものであることを要するとの見解に立つても、優にこれに当るものと考えられる。すなわち原審証人秋本愛子の原審公判廷における供述、原審証人斎藤宏三に対する受命裁判官の証人尋問調書及び押収してある診療録一通によれば、受傷当日被害者が医師の診療を受けた際、その頬にりんご大の腫脹等があつたこと、同女が一四日間通院し左肩、左肘等の治療を受けたこと、同女がその後も痛みを訴えていることが明らかであるが、そうであるとすればそれはかなりの程度生理機能を害し、健康状態を不良に変更したものであり(前示斎藤宏三証言によれば、本件傷害は、二週間の治療を必要としたもので、軽傷ではなく、中等度であり、その中では幾らか軽い傷害である旨述べている。)、日常生活において一般に看過される程度の傷害でないことは明らかである(原審は、以上の事実関係に基づき、本件起訴状記載の公訴事実にある「加療七日間」の限度で傷害の程度を認定したものと解される)。

三 刑法第二四〇条は、強盗犯人(刑法二三八条、二三九条により強盗として論ぜられる場合を含む)がその強盗の機会において致死傷のごとき残虐な行為を伴うことが少なくないことにかんがみ、厳罰にする必要があるとしてこれを犯罪類型化することにより設けられたもので、その重く処罰することの合理性が認められ、なおその法定刑の幅について批判の余地があるとしてもそれは立法府の裁量を逸脱するものとは解されず、また現行法においても法律上の減軽及び酌量減軽が共に行われる場合には処断刑の下限を一年九月まで下げることができるのであるから罪と刑との均衡を失するとまでは考えられない。

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